マーメイド・セレナーデ
部屋を変えて寝ようか、だけどそうしたら下にいる人たちにあれこれ言われるんだ。
破棄したいならそうすればいいのにあたしは周囲の反応より、翔太の怒りのほうが怖い。あの眼が怖い。

規則的な寝息が聞こえ始め緊張を解く。


体育座りをして膝に顔を埋めた。

あたし、帰ってこなければよかったかも。
翔太に会わずにいれるわけないのに、会わないはずだと妙に自信を持ってて、会ってしまえばあたしは翔太のアクセサリーになってしまう。



「帰りたい……」

「街にか」



寝ていたと思っていたから声が聞こえて一瞬びくついたがすぐに落ち着きを取り戻す。
いつもそうやって、あたしを振り回すんだ。

答えなんてわかってるくせに問い掛けるのが気に食わない。反応を返さなくても何も言わないのが気に食わない。
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