マーメイド・セレナーデ
「あんたなんかと絶対結婚なんてしないんだから」

「………」

「ぜったい、」

「なら、そう言えばいい。………言えねえんだろ、俺様が怖くて」

「………決めた、明日帰る」

「なんだと?」

「翔太がいるならあたし落ち着けないもの」

「おばさんは、」



その言葉にぎくりとしたが振り払って帰る、と小さく唸った。
それ以上追求してこなくて寝たのかと思ったとき、送る、とだけ聞こえた。

翔太は、翔太は。
あたしを迎えに来たのだって自分へ周りの評価を上げるため、泥を落としたのはあたしがあの畦道を歩いたと悟らせないため。送ると言ったのは良好な関係と見せるため。
全部自分のため。


田舎でこんなポイント稼ぎしたって意味のないだろうに。


まだ肌寒い季節だけどあたしは布団から離れた壁側に座ったまま眠り込んでいった。
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