マーメイド・セレナーデ
ペットボトルを拾い上げ、蓋を開けて口を付けるとそのまま喉が動く。


え、あたしに飲ませるんじゃないの?
待て待てそれじゃああたしが期待してるみたいだわ。
口移しなんてしたくないに決まってる。


呆気にとられた顔をしてまぬけだったと思う。
奴は目敏くあたしのその顔に気付いてまた口角を上げた。



「俺様に口移しで飲ましてほしかった、って顔だな」

「ち、ちがっ!」



腕を引かれて翔太に倒れ込む。
肩を抱かれ逃げられない。

見上げれば、ペットボトルを傾けているところで気付けばまた、口は塞がれていた。


ぬ、ぬるい……。
少し潤って口が離れる。けれどまた塞がれて深く深く噛み付かれる。
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