マーメイド・セレナーデ
のろのろと身支度を整え家を出て、仕事場に向かった。
電話、すべきだったかな。仕事場近くなって思い出した。


翔太に会って、あたしまともに頭が働いてない。
仕事になるかしら。


翔太から逃げることばかり考えて、怒りの眼を向けられないように行動して。


もう2度とあの眼で見られたくない。
蔑むような眼で見てほしくない。


あたしは翔太に、翔太に………。



「お疲れさまでした、」



棚卸しの作業を手伝い、普段より早く帰宅が出来る。

そうだ不動産……。
通りに面した不動産のガラスに貼られた間取りをぼぉと眺める。

引越し資金、あったかな。


………翔太のマンション、一人暮らしには広そうだったな。
どうでもいいこと、だよね。あたしには。


翔太、翔太と頭の中がパンクしそう。
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