マーメイド・セレナーデ
「いつになったらあたしは、あいつから離れることができるの。もうやだ……」



そのまま冷蔵庫前にへたり込んで、少し涙を零した。
開かれたままの冷蔵庫が無情にもアラームを鳴らし続けた。

いつだって、翔太はあたしの前に現れて、何もかもを掻っ攫って行く。
聞きたいことを誤魔化して、その顔に何も言えなくなる。

もっと、もっと知りたいと思うけれど、その反面知りたくもない。


思えば、あのころからずっとあたしは翔太に振り回されてる。
泣きそうになるくらいに。




明日も休みだ。
はやく、はやく寝よう。


寝る瞬間まで翔太はあたしの脳裏に張り付いて離れない。



「だいきらいなんだから」



口に出して言わなければあたしがあたしを保てない気がした。
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