マーメイド・セレナーデ

見えない愛情

「なんの言葉もなくて、簡単にあたしの前に現れて。俺様だ、なんて」



あれからあたしは翔太には敵わない。
あの眼で睨まれたくない、と必死だった。

あたしの必死の言葉に辛そうに歪むその顔、翔太らしくない。
やめて、あの頃に戻れないことはわかってる。錯覚させないで。



「ガキだったんだ、俺は」

「なら今は大人?謝りもないのに……」

「あのあとすぐに出て行って翌日には居なくなって、謝る暇さえ与えなかったのはお前だろ!」

「だって、」

「じゃあ、なんて言えばいいんだよ。許す気なんてねぇくせに、俺の言葉を聞くつもりなんてねぇくせに」



そんな衝動をぶつけないで。

あたしもうこれ以上、翔太にきらわれたくないの。
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