マーメイド・セレナーデ
「いい加減にしてよ、翔太!あたしは歩い、て……い、く」



最後が途切れとぎれになったのはあたしのブーツの汚れを落としている姿が眼に入ったからだ。


ゆっくりと起き上がってその様子を見下ろす。

あの俺様翔太があたしのブーツを磨いてる!
あたしが翔太を見下ろしてる!

あったことないシチュエーションにあたしは驚いて、



「女王様みたい、」

「あぁん?ふざけたこと抜かすな、真知のくせに。俺様の車を泥まみれにする気か」


あたしが見下ろしてるはずなのに、あたしが優位なはずなのに。

負けてる気がする。
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