御曹司様はあなたをずっと見ていました。

「梨沙、高宮専務が来ているっていう噂で来てみたら、赤沢さんと細谷主任のスリーショット…すごい!良いもの見たよ…眼福、眼福。」

「もう、裕子はいつの間にそこに来ていたの?そういうとこ…ちゃっかりしているよね…」


すると、裕子は周りをくるりと見渡した。


「ねぇ、梨沙、今日から配属になった彼はどこにいるの?」

「う…ん。神谷さんのことね。お昼までは一緒だったのだけど…主任に何か別の用事でも言われたのかな?」


裕子は怪訝な表情をする。


「でもさぁ、その彼はどこからの異動なの?関連の子会社からの異動にしては、今の時期に珍しいよね?」

確かにそうだ。細谷主任も神谷さんについては、あの会議室での紹介以来、何も詳しく教えてくれていないのだ。

「確かにね…でも、あまり詮索するのは良くないし…そのうち、自分で言ってくれるかもね。」


裕子は、何か思いついたように少し悪戯な表情をした。


「なんか訳ありな感じで興味が出て来た。でも、神谷さんってかなりのモサ男だって聞いたけど…いきなり変身したりしてね。」


裕子は冗談のつもりで楽しそうに話をしているが、社食で眼鏡を外した姿を思い出してしまった。
たまたま、見間違えなのだろうか…そう見えただけなのだろうか。

その整った顔は、わずかだがどこかで見たことのある顔のようにも感じていたのだ。


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