御曹司様はあなたをずっと見ていました。
進一郎さんのことは、皆からかなり聞かれるのではないかと覚悟はしていたが、それは想像以上の質問攻めだった。
やっと一段落といった時には、すでに2時間以上の時間が経っていた。
皆の輪から抜け出して、すこし外の空気にあたろうと店を出た。
ちょうど店の入り口には、入店を待つ人のためなのか、木製のベンチが置いてある。
私はそのベンチに座り、大きく深呼吸した。
皆からの熱い質問攻撃で、体温が3度くらい上がってしまった気分だった。
外の心地よい風にあたっていると、店から誰かが出て来たのだ。
その人物を確認しようと顔を見上げると、質問攻めになる前に話をしていた一条君だ。
「あっ、一条君。さっきは話の途中でごめんね。」
「あぁ、別にいいよ。」
一条君はそっけない返事をしながら、ベンチの横に腰かけた。
「…梨沙ちゃん…あのさ…。」
「…ん?なに?」
一条君は何か言いづらそうに言葉を詰まらせた。
そして、一呼吸くらい沈黙したあと、急に私の方を向いたのだ。
「梨沙ちゃんは…今…本当に幸せなのか?」
「…っえ?…どういう事?。」