御曹司様はあなたをずっと見ていました。
一条君の意外な質問に驚いた。
突然のことで、なんと答えて良いのかと困惑する。
「…高宮さんと一緒に居て疲れないか?…梨沙ちゃんと高宮さんでは僕から見たら合わないよ。」
「ど…どうして、そんな事言うの?」
一条君は、私の左手を両手で掴んだ。
「梨沙ちゃんはきっと、大人の高宮さんに憧れているだけなんじゃないか?あの人とは住む世界が違うだろ?…俺だったら等身大の梨沙ちゃんと対等に接することが出来るよ。」
私は慌てて掴まれた左手を振り払おうとする。
しかし、両手で掴まれた手は動かすことすらできない。
「わ…わ…私は憧れているだけじゃないわ…進一郎さんを愛しているの。」
「かわいそうにね…梨沙ちゃんはすぐに捨てられるよ…それでもいいの?」
一条君は掴んだ左手を自分の顔に近づけた、そして、手の甲に口づけようとする。
私の薬指には、進一郎さんからもらった結婚指輪が光っている。
「一条君、止めて…離して!」
その時だった、誰かが私の左手を包み込むように掴み、一条君からっ引き離した。
「一条と言ったな…梨沙から離れろ。」
その声は大好きな進一郎さんの声だった。