御曹司様はあなたをずっと見ていました。

これは披露宴というよりも、仕事の延長戦のようなものだ。

今日、私が着ているウェディングドレスもメーカーの宣伝になるからと提供されたものだ。
動く広告のようである。
しかし、メーカーがプライドをかけて作ったドレスだけあって、それは素晴らしく豪華なのだ。
純白のドレスに、少し光沢のある白い糸で細かな刺繍を施してある。
裾の部分には繊細で美しい鳳凰が刺繍されていた。

進一郎さんのタキシードも素敵だ。
ドレスシャツを合わせてあるが、中世の王子様が着ていたようなフリルが付いている。
普通の男性が着たら、到底似合いそうもないが、それも着こなしてしまう進一郎さんもスゴイ。モデル顔負けと言ったところだろう。

食事から引き出物まで、あらゆる物が宣伝に使われている。
グループ会社を上げての広告宣伝会のようでもある。

たった3時間の披露宴であったが、披露宴がお開きになった時には、あまりにも沢山の人に、人酔いしたようで疲労困憊だ。

進一郎さんは、まだ皆に囲まれているため、私は一足先に控室へと向かった。
付き添いには裕子が来てくれていった。

「梨沙、すごい披露宴だったね…会社の社長ともなれば仕方ないのかもね。」

返事を返そうとした時、突然目の前が真っ暗になり、酷い吐き気に襲われたのだった。
私は思わずその場所に座り込んでしまった。

「…裕子…ごめん…なんか急に…貧血かな?」

「だ…だ…大丈夫!?梨沙!梨沙!高宮さん呼んでくるよ!」

私は裕子の腕を掴み、進一郎さんに伝えに行こうとする裕子を止めた。

「裕子、進一郎さんに言わなくて大丈夫だよ…ちょっと疲れただけだよ。」

裕子の肩を借りて、控室まで到着したところまでは覚えている。
しかし、私はその後に意識を無くしてしまったようだ。


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