御曹司様はあなたをずっと見ていました。
裕子が席にもどり少しすると、神谷さんが細谷主任と一緒に戻って来た。
やはり、主任が何か用事を頼んだのだろう。
神谷さんは、お昼にスーツの上着を濡らしたからなのか、ワイシャツの姿だったのだ。
しかし、その姿はとても違和感あるものだった。
あれだけ、ヨレヨレのスーツを着ているのに、ワイシャツにはしっかりとアイロンがされているようだ。
さらに、先程は気が付かなかったが、神谷さんはとても綺麗に磨かれた革靴を履いているのだ。手入れが行き届いた靴だと分かる。
思い返してみれば、持っていたハンカチにもアイロンがキッチリとされているように見えたのだ。
(…神谷さんって…何者なの?…)