御曹司様はあなたをずっと見ていました。
「おばあちゃん、具合はどう?」
私は会社帰りに、おばあちゃんの入院している病院にお見舞いに来ていた。
おばあちゃんは最近体調を崩すことが多かったが、先日高熱を出してしまいとうとう入院してしまったのだ。
「…梨沙、仕事も大変なんでしょ…お見舞いは来なくても大丈夫だから、早く帰って体を休めなさい。早く寝ないとだめよ。」
おばあちゃんは、私がいくつになっても子供のように心配してくれる。
優しく微笑むおばあちゃんの顔を見ると、なぜかホッとするが、涙も出そうになるのだ。
「もう、私の心配はしなくても大丈夫だよ…何か飲み物でも買ってくるね。」
病室を出た私は病院内にあるコンビニに向かった。
この病院は救急患者も受け入れる大学病院のため、24時間営業のコンビニも併設されており、とても便利だ。
「冷たいお茶と…カステラかな…。」
買い物を終えた私が病院の廊下を歩いている時だった、スーツを着た男性が廊下を歩いてこちらに向かってきていた。
よく見るとその二人は、驚くことに高宮専務と秘書の赤沢さんではないか。
(…私のことなんて知らないだろうけど…挨拶したほうが良いよね…?)
「お…お…お疲れ様です。」
すると、二人は驚いたように私の方を見たのだ。
先に返事をしたのは、秘書の赤沢さんだ。
「あぁ…君は確か…細谷のチームの子だよね?」
「は…はい。佐々木梨沙と申します。」
次に話し掛けて来たのは高宮専務だった。
「こんな時間に、病院にいるなんて…どうしたの?」
「祖母が入院しているのです。祖母といっても、私の育ての親でもあるんです。…専務はお仕事ですか?」
「うん、うちは製薬会社だから、病院はお客様なんだ。…お婆様、お大事にね。早く良くなると良いね。」
「ありがとうございます。祖母も喜びます。」
高宮専務と赤沢さんは笑顔を向けると、静かに手を振って歩き出した。
(…皆が騒いでいた意味が分かった…お二人ともカッコイイ…)
爽やかな笑顔の二人はまるでアニメでよく見る異世界の王子様のようだった。
普段の私はイケメンに騒ぐタイプではない。
どちらかというと、二次元のアニメキャラに夢中のほうだ。
しかし、近くでみたリアルイケメンの迫力はすごかった。
自然と頬が熱くなっていた。