御曹司様はあなたをずっと見ていました。
それぞれの正体
翌日、会社に出勤すると、なにやら事務所内にたくさんの人が集まっている。
そして、よく見ると私のデスクの周りに人が集まり、私の使っているノートパソコンをみんなで見ているようだ。
なにが起きているのだろうか。
「あ…あの…どうかしたのですか?」
すると、同じ部署の男性が私を見た。
「佐々木さん!昨日は何時ころに帰ったの?昨夜に大変な事件が事が起こったんだ。」
「…大変な事件と言われても…昨日は、祖母のお見舞いがあって、定時で失礼したのですが…何かあったのですか?」
さらに、横にいた女性や男性達も私を見た。
「佐々木さん、あなたのパソコンとIDからアクセスされて大切なデータが無断で開かれたようなのよ。」
「な…なぜ…そんなことが…」
うちの会社のセキュリティーは、重要なデータへのアクセスは全て記録されるようになっている。昨夜、私のパソコンから私のIDを使って、誰かが重要データを開いたことが分かっているのだ。
すると、後輩の木下由香里がとんでもない事を言い出した。
「佐々木さんが嘘を言っているか、又は私は神谷さんが怪しいって感じるけど、皆さんもそう思いませんか?だって佐々木さんと神谷さんは一緒に昨日仕事していたでしょ?」
「な…何を言うのですか?私は嘘なんか…それに神谷さんを疑うなんて失礼です。」
すると、由香里はさらに私に詰め寄った。
「神谷さんを庇うなんて怪しいわね。でも、現に彼はまだ出社していないじゃない。充分な証拠じゃない?」
確かに神谷さんはまだ事務所に顔を出していない。
しかし、何の証拠もなく疑うことは許せない。
「皆さんは、見た目で神谷さんをバカにしたり失礼な事をしているのに、彼は怒らずに、私を守ってくれたりしていました。私は神谷さんを信じます。神谷さんは悪い人ではありません。疑うのでしたら、私を調べてください。」
由香里は私の言葉を聞いて、なぜか口角を上げた。いつも可愛い彼女が悪魔のような笑顔を見せたのだ。
「佐々木さん、では…お望みの通りあなたを調べさせてもらうわ。何か証拠になるこものを、隠し持っているかも知れないわ。それに、あなたが神谷さんを庇っても彼はここに居ないじゃない…大好きな神谷さんにも裏切られたのかしら。」
由香里は周りで見ていた人たちに声をかけて協力を求めると、皆も頷きながら私のデスクにおいてある小物や、さらには私の鞄を奪い取って中を調べ始めたのだ。
恐らく、由香里は私が出社する前から、皆が私を疑うような、嘘のつくり話でもしていたのだろう。
皆が由香里を信じて私を犯人扱いしている。
私の持っていた鞄の中の物は、すべて床に投げ出されてしまった。
化粧ポーチからは化粧品も床に落とされてしまった。
無残にも床に広げられた小物や、鞄の中の物を見て涙が溢れそうになるが、それをグッと拳に力を入れて耐えていた。
すると、裕子がこの騒ぎに気が付いて駆け寄ってきてくれた。