御曹司様はあなたをずっと見ていました。
驚き過ぎて私は言葉を失って立ち尽くしていた。
すると、高宮専務はさらに説明を始めた。
「僕の祖父である会長は、この時代になっても頭が固くて困るんだ。家庭を持って守るものが無いと、落ち着いて仕事が出来ない…なんて言っている。そのために、僕はこの会社の為にも、早く結婚しろとうるさく言われているんだ…困ったもんだよ。」
「…でも、高宮専務なら相応しい結婚相手が、他に沢山いらっしゃいますよね?」
高宮専務は呆れたように大きく息を吐いた。
「確かに…僕の肩書に寄って来る女性は沢山いるよ…それに僕の両親もお見合いの話を、うるさい程に持ってくる。…しょうがないから、何度かお見合いに行ったけど、煌びやかに着飾って人形みたいな女と、化粧お化けばっかりだったよ…もううんざりなんだ。」
そして、高宮専務は真っすぐ私の前に立った。
「僕は、君と数日間一緒に仕事したけど、君みたいな女性は初めてだったんだ。とても興味があるよ。」
突然興味があるなんて言われて、顔が熱くなった。
「き…興味があるって…いわれても…それと結婚とは関係ないですよね…。」
すると、高宮専務はクスッと笑った。
「君は誰に対してでも、優しく接することができる。僕にもこの会社にも、必要な女性かも知れないな…」
「よく意味が分からないのですが…。」
高宮専務は私の頭にポンと手を置いて微笑んだ。
こんなに近くで高宮専務の顔を見ると心臓がドクリと大きく跳ねる。
カッコ良すぎるのだ。
「分からなくても大丈夫だよ…返事は急がないから、結婚のことは考えておいてくれ…良い返事を期待しているよ。」