御曹司様はあなたをずっと見ていました。

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今日は裕子と久しぶりの外食。いつもお弁当なので、二人でランチを外で食べるのは珍しいのだ。
新しくオープンしたイタリアンのお店でランチにすることにした。

会社から歩いてすぐの距離で、オフィス街には珍しい、レンガ造りの古い洋館のような外観がとても可愛い。
しかも、オープン前の口コミでは、本場イタリアの三ツ星レストランで修業したシェフがつくったお店とのことだ。
オープン初日は行列ができていたが、一週間ほど経っているので、そろそろ落ち着く頃だろうと思い、裕子と来てみたのだ。

ランチの時間帯は思っていた通り混雑していたが、12時になると同時に急いで会社を出てきたため、待たずに入ることが出来たのだ。
おまけにラッキーだったのは限定10食の日替わりランチも注文することが出来た。
今日のランチはマリネの前菜に魚介のパスタ、ミニアクアパッツァ、オレンジのシャーベットだ。

裕子はマリネに入っていたタコを頬張り、嬉しそうに微笑んだ。

「梨沙、すっごく美味しいよ。来て良かった。」

「裕子は美味しいもの食べると、本当に幸せそうだよね。見ている私もうれしくなるよ…私達はお弁当が多いから、裕子と外食は、久しぶりだね。」

「そうだよ…それに梨沙にはいろいろ聞きたい話もあるしね…神谷さんが高宮専務だった話も詳しく教えてよ。」

由香里の事件や、高宮専務の変装の話は、今や会社で一番の話題となっている。
裕子も詳しく話が聞きたいようで、目を輝かせている。

「べ…べつに…裕子が知っている事以外は、何もないよ!」

すると、裕子は大きな丸い目で私をじっと見る。
私はこの目に弱いのだ。

「高宮専務と急接近とか…ないの?」

なぜか裕子は鋭いところがある。
しかし、高宮専務と結婚の話をしたなんて、言えるわけがない。

すると突然、裕子は私の方を指差してフルフルと震えたのだ。

「裕子、どうしたの?」

その時、私の後ろから男性の声が聞こえたのだ。

「やぁ、ここで会うとは偶然ですね。」

私は恐るおそる振り返る。
すると、そこに居たのは高宮専務と秘書の赤沢さんだったのだ。

「た…た…高宮専務…お疲れ様です!」

私が慌てて立ち上がろうとすると、専務は私の肩を優しく押して座れと言っているようだ。

「ちょうど良かった、それじゃあこれ貰っていくね…ごゆっくり。」

高宮専務は、私達のテーブルに置いてあった伝票をすっと取り上げたのだ。
そして、ヒラヒラと手を振ったのだった。

「そんな…伝票…自分で払います!」

すると、横にいた秘書の赤沢さんはニコリと笑いながら私に首を振った。

「こういう時は、甘えて良いのですよ…ゆっくり召し上がってくださいね。」

それでなくても目立つイケメンの二人だ。
私達のやり取りを見ていた女性客達からは、溜息が聞こえて来るようだった。

「梨沙、何が起こったの…今の何…」

裕子もその場で放心状態になっている。


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