御曹司様はあなたをずっと見ていました。
イタリアンレストランの一件から、すでに2週間ほど経過していた。
高宮専務とは社内でもほとんど合う事もなく、たまに歩く姿を見かけるくらいだった。
今となっては、高宮専務と知り合ったのも、全てが夢だったのではないかと思うほどだ。
いつも通りの日常。
しかし、一本の電話がいつもの日常を一変する事となる。
それは、もうすぐ終業時間という時だった。
外線からの電話を取った細谷主任が私に声をかけた。
「佐々木さん、病院から電話が入っていますよ。内線に出てください。」
病院から電話とは何の用だろうか。
嫌な胸騒ぎがする。
「はい、佐々木です。」
その電話は、おばあちゃんが入院している病院だった。
おばあちゃんの担当医から直接電話が来たのだ。
咄嗟に嫌な予感が頭を巡った。
「実は…先程、急な発作を起こしまして…処置をして今は落ち着いていますが、お話がありますので、今日これから病院に来ていただけますか。」
やはりおばあちゃんが発作を起こしたという連絡だった。
以前から担当医には言われていたことがある。
おばあちゃんは、かなり体力が落ちているので、発作を起こすと命にかかわると…
嫌な予感は当たってしまったようだ。