御曹司様はあなたをずっと見ていました。
本来であれば、高宮専務は私なんかでは、手の届かない存在。
いくら高宮専務が言ってくれたとしても、結婚なんて恐れ多い話だ…。
でも今の私に、すぐに結婚してくれる男性なんていない。
翌日、こんなにもタイミングが良い事がおこるのだろうか。
会社の廊下を歩いていると、前から高宮専務と赤沢さんが歩いてきたのだ。
(…こんなチャンスは…ないよね…どうしよう…でも…がんばれ私!…)
私は勇気を振り絞って高宮専務に話し掛けることにした。
「お疲れ様です、高宮専務。…あの少しお話できますか?」
すると、高宮専務は赤沢さんに先に行くよう指示をして、その場に止まってくれたのだ。
「お疲れ様、佐々木さん。…話って何かな?よければ少し時間があるから、そこのミーティングルームで話そうか。」
高宮専務は近くのミーティングルームに向かってくれた。
そして、部屋のドアを開けて微笑んだ。
「部屋の中は誰もいないから、緊張しなくて大丈夫だよ…上司だと思わないで話してね。」
テーブルを挟んで向かい合わせに座る。
久しぶりに近くで見ると、高宮専務のカッコよさにあらためて心臓がドクリと鳴る。
「…あ…あ…あの…先日言ってくださった…偽装結婚の件ですが…まだお気持ちは変わりないでしょうか?」
すると、高宮専務は少し怪訝な表情をした。
やはり、偽装結婚は本気の申し出では無かったのだろうか。