御曹司様はあなたをずっと見ていました。
部屋に運ばれて来たお料理は、どれも美しく盛り付けられた懐石風だ。
なんとなく日々忙しく過ごしていたため、気が付けばもう夏が終わりに近づき、秋の気配がしている。
そんな私に、このお料理は季節を感じさせてくれている。
栗や茸などの食材に、紅葉が模られた飾りが美しい。
食べてしまうのが勿体無いと感じてしまう。
お料理をじっと眺めて自然と口角が上がっていたようだ。
「梨沙、見た目は合格みたいだね。…味も保証するよ、さぁ頂こうか。」
お料理を見て、嬉しそうにしていた顔を進一郎さんに見られて、少し恥ずかしくなる。
進一郎さんは、とても綺麗な所作と箸づかいで、お料理を口に運んだ。
その姿は気品があり、育ちの良さを感じてしまう。
「うん、いつもの味だ。…ここの栗は絶妙な甘さと柔らかさなんだよ、梨沙も食べてみて。」
進一郎さんに促されて、まるで枝についている栗を模した甘露煮を口に入れてみる。
「…ん~ん、…美味しいです。」
私の顔を見て進一郎さんはクスクスと笑った。
「梨沙はわかりやすくて可愛いね。美味しいだろ?沢山召し上がれ。」