御曹司様はあなたをずっと見ていました。
綺麗に盛り付けられたお料理は、どれも美味しく上品な味がする。
すると突然、進一郎さんが箸をおいて真面目な顔をした。
「梨沙、…おばあさまのご容態はどうなのかな?」
「…はい。一旦は落ち着きましたが、かなり体力が落ちてしまって…次に発作をおこせば、乗り越えられないかも知れないと言われてしまいました。」
「…そう。」
進一郎さんは、一度沈黙したが、少しして口を開いた。
「梨沙、結婚式は少し早めにしよう…とりあえず身内で式を挙げるのはどうかな。…申し訳ないけれど、会社関係の人を呼ぶ結婚式も立場上、後からもう一度する必要があるんだ。」
進一郎さんは、おばあちゃんを気遣って結婚式を早めてくれようとしていたのだ。
「…そんな…申し訳ないです…おばあちゃんの為だけに2度の結婚式なんて…。」
しかし、進一郎さんは大きく首を横に振った。
「梨沙の一番大切な人は、僕にとっても大切な人だから…近いうちにご挨拶に伺って、結婚式の日程も決めよう。」
「…ありがとうございます。」
進一郎さんの言葉に、自然と涙が頬を流れていた。