御曹司様はあなたをずっと見ていました。
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「おばあちゃん、体調はどう?」
私はおばあちゃんの寝ている電動ベッドを、起き上がらせながら話し掛けた。
「まぁ、梨沙、来てくれたのね。…今日は少し気分が良いわ。」
おばあちゃんはベッドと一緒に起き上がりながら、私を見て笑顔を見せた。
「おばあちゃん、今日はご挨拶に高宮さんが来てくれたの。」
今日は進一郎さんが、おばあちゃんに結婚の許可を頂くご挨拶に来てくれていた。
挨拶ということもあり、スーツ姿で来てくれている。
今さらではあるが、進一郎さんのカッコよさに気持ちが追い付かない。
紺色の改まったスーツを着た進一郎さんを見て、心臓が大きく音を立てる。
進一郎さんは、おばあちゃんの見える位置に近づくと、深々とお辞儀をした。
「…本日は突然に申し訳ございません。結婚のお許しを頂きたくて参りました。…どうか梨沙さんと結婚させてください。」
すると、おばあちゃんは微笑んで進一郎さんを見た。
「…私は梨沙が選んだ人を反対なんてするわけないわ…それに先日、お会いした時に、こんなに素敵な男性が梨沙と結婚してくれたら、どんなに嬉しいかと思っていたのは本当よ…高宮さん、梨沙をよろしくお願いしますね。」
「…はい。絶対に何があっても梨沙さんを守ると約束します。ありがとうございます。」
おばあちゃんは、横で涙を堪えることのできない私を見た。
「…梨沙、…あなたは小さい時からしっかりしているのに、涙もろい子だったわね。…高宮さんと幸せになりなさい…おばあちゃんは本当に嬉しいわ。」
「…おばあちゃん。」
進一郎さんは、そっと私にハンカチを渡してくれた。
そして、私の頭に優しく手を置いて、ゆっくりと撫でてくれたのだ。