御曹司様はあなたをずっと見ていました。
おばあちゃんの体調も考えて、身内だけの結婚式は来月には行おうと、進一郎さんは言ってくれた。
しかし、私には大きな不安があったのだ。
進一郎さんのご両親や身内の方々は、私との結婚をどう思っているのだろうか。
進一郎さんは、会社を背負う次期社長と言われている。
私なんかが、そんな彼と結婚することが許されるのだろうか。
病院からの帰り道、私は進一郎さんに勇気を出して話をしてみたのだ。
やはり私の不安は当たってしまったようだ。
「あの…進一郎さん、…私のことはご家族が反対していないのでしょうか?」
すると、進一郎さんは笑顔を向けてくれたが、明らかに無理しているようにも見える。
何も言わず沈黙していたが、少しして進一郎さんが重い口を開けた。
「確かに、あの人たちは、自分たちに都合の良い相手と僕を結婚させたがっている。特にこだわりの強いのは母親なんだ…梨沙は知っているかも知れないが、父は婿養子なんだ。だから母親は、この会社に思い入れが強くてね。」
「…はい。そのお話は知っております。お父様はとても優秀な方で、会長であるお爺様が、この会社のために、結婚を依頼したと聞きました。社内では有名なお話ですよね。」
「…うん。その当時どうやら母にも好きな男性がいたみたいだけど、家のため…会社のために別れて、父と一緒になったらしい。…だから、結婚は家のためや会社のためにするのが、当たり前と思っているんだ。」
「…そうだったのですね。」
すると、進一郎さんはいきなり私の手を掴んだ。
そして、私を真っすぐに見たのだ。
「…梨沙、少し辛い気持ちにさせるけど、僕が守るから…何があっても僕を信じてくれないか?」
「…はい。こんな私ですが、進一郎さんの足を引っ張らないように努力します。」