御曹司様はあなたをずっと見ていました。
進一郎さんは、運転席に座ると胸ポケットから眼鏡をとりだした。
細いシルバーの眼鏡が、端正な顔を引き立てている。
男性なのに、とても綺麗な顔という表現がぴったりだ。
「梨沙、そんなに僕の運転している姿が珍しいの?…そんなにじっと見られると、なんだか照れるよ。」
進一郎さんに言われてハッとした。
眼鏡姿で運転する進一郎さんはとても素敵すぎる。
思わず見惚れていたようだ。
「ご…ごめんなさい…眼鏡かけるのですね。」
「あぁ…そういえば、眼鏡は始めて見せたよね。運転する時は必要なんだ。…神谷進一は黒縁の大きな眼鏡だったけどね…。」
進一郎さんは神谷進一の話をしてクスッと笑った。
なんだかすごく昔の出来事のように感じて、今では夢だったのではないか思うくらいだ。
車は一時間ほど走ると、閑静な住宅街に入った。
「もうすぐ到着するよ…緊張しなくても、大丈夫だからね。」