御曹司様はあなたをずっと見ていました。
「進一郎!そんな勝手なマネはさせないぞ。」
社長は進一郎さんの胸元を掴んだ。
「社長…この手を離してください。暴力で訴えますよ。」
真っ赤になり逆上する社長とは正反対に、進一郎さんは静かに淡々と言葉を出していた。
社長が手を離すと、進一郎さんは私の背中を押して、無言で部屋を出た。
「あ…あの…進一郎さん…大丈夫なのですか?」
「大丈夫じゃ…ないだろうな…でもこれで良いんだ。…梨沙、この会社ほどの待遇は、出来ないかも知れないが、僕の会社で働いてくれないか?」
「僕の…会社?」
進一郎さんはクスッと笑いながらウィンクをしたのだ。
「実は、海外から戻って来る前に、僕は会社を作る準備をしていたんだ。赤沢も協力してくれている。…水面下で動いていたから気が付かれなかったようだけど、結構綿密に根回しはしてあるんだ。」
「す…すごいです。」