御曹司様はあなたをずっと見ていました。
「僕は“リサ”と呼ばれていた女の子に、心が救われたんだ。厳しい家に育って自由がない灰色の世界に僕はいたんだ、でも、リサが僕の手を引いて、連れて行ってくれた世界には、鮮やかな色が溢れていたんだ。可愛く笑うリサは天使のようだった。…そして、この会社で君の“ササキ リサ“という名前を聞いたときに、震えるほど驚いたよ。しかしまさか本人だとは思わなかったんだ。」
「では、どうして私がその子だと分かったのですか?」
「僕は君が、あの時の女の子だと思わなかったけど、ただ、なぜか少し胸に引っかかるものがあってね…そんな時、君のおばあ様が病院に入院していると知り、どうしても確認したくて行ってみたんだ。」
これでようやく分かった事が有る。
おばあちゃんの病室に、進一郎さんがお見舞いに来てくださった理由が分かったのだ。
いくら、ついでの用事が合ったとしても、わざわざおばあちゃんのお見舞いに来てくれるなんて、違和感があったのは確かだ。
「おばあ様から君の話を聞いて、あの女の子だったと確信したんだ。その時、おばあ様が花嫁姿を見たいと言ったことに、僕は無意識に付け込んでいたのかも知れない。結婚を申し込むなんて、自分でも積極的すぎて驚いたよ。」