御曹司様はあなたをずっと見ていました。
進一郎さんが私にハグをしているその時だった。
カチャリと部屋のドアが開く音がして、赤沢さんと細谷主任が入って来たのだ。
慌てて私は進一郎さんから距離を置いた。
そして、なにか言いたそうにニヤニヤ解いている二人に、誤解をされないよう説明する。
「赤沢さん、細谷主任、…これは違うんです…」
すると、二人はさらにニヤニヤと笑いながら目を細めた。
最初に口を開いたのは細谷主任だった。
「僕たちは、お邪魔だったかな…それと佐々木さん、僕はもう主任じゃないから、細谷で良いからね…君の同僚だ。」
「は…はい。細谷…さん。」
赤沢さんは、笑いながらも少し呆れた表情をした。
「まさか、高宮のこんな姿を見るとは思わなかったよ…あれだけ女に言い寄られても、クールに対応していたお前がね…でもまあ、佐々木さんを抱きしめるのは、ここ以外の場所にしてくれるとありがたいがね。」
すると、開き直ったように進一郎さんは話し出した。
「梨沙を他の女と一緒にするな…それと、梨沙に誤解されるようなことは言わないでくれよな…。」
「はい、はい。」「わかった、わかった。」
二人は両手を広げて呆れたポーズをしてみせた。