御曹司様はあなたをずっと見ていました。
私はゆっくりと目を開けてみると、窓からの光が私を照らしていた。
陽の光と微かに聞こえる鳥の声。
夜が明けたばかりの気配がする。
ふと周りを見渡すと、白い壁と白いカーテン。
ここは病院…なのだろうか。
気づくと誰かが私の手を握っているようだ。
自分の手に目を移すと、そこには進一郎さんが私の手を握って、そのまま椅子で寝息を立てていたのだ。
一晩中、近くにいてくれたのだろうか。
握られていた手にそっと力を入れて握り返してみる。
すると、進一郎さんは驚いたようにピクリと体を震わせて目を開けた。
「…梨沙!気が付いたのか…大丈夫なのか?」
「…はい。…私は大丈夫です。ご心配をお掛けしてしまったようですね…ごめんなさい。」
進一郎さんは私の両頬に手を添えた。
「梨沙…すまなかった…君に痛い思いをさせてしまったね…僕のせいだ。」
私は顔を左右に振って微笑んだ。
「…進一郎さんは怪我していないのですよね?…それなら私は充分満足です。進一郎さんの、お役に立ちたかったので…へへへっ」
少しお道化て笑った私の額に、進一郎さんも額を寄せた。
「梨沙…無事でよかった…もしもの事があったらと、心臓が張り裂けそうだったんだ。」
「…進一郎さん…」