御曹司様はあなたをずっと見ていました。
看護師の女性は、私のベッドに近づき、少し笑みを浮かべて小声を出した。
「昨夜から、女性が廊下で心配そうにウロウロと歩き回っているんです。それで先程、声を掛けてみたら、佐々木梨沙さんは無事なのか?とすごく必死な表情で質問してきたんですよ。」
「女性が私を?」
「…はい。病室に入るよう勧めたのですが、廊下の角を曲がった見えないところに座っているんです。佐々木さんのお知り合いではないでしょうか?」
すると、進一郎さんはポツリと呟いた。
「…京香だな。」
進一郎さんは、何も言わず病室を出て行った。
その様子を見て、後を追いかけようとした赤沢さんの腕を、細谷さんが掴んで止めたのだ。
「…ここは高宮一人のほうが良いだろう。」