御曹司様はあなたをずっと見ていました。
ブティックを出て食事を済ませた私達が、進一郎さんのマンションに到着したのは、もう深夜に近い時間だった。
当然、事務所には、もう誰もいない。
「梨沙、今日からここが梨沙の家でもあるんだ…遠慮しないで寛いで欲しい。」
「あ…ありがとうございます。」
なんだか、改めて言われると、とても恥ずかしい。
「梨沙は、階段をあがって一番奥の部屋を使ってくれ。」
案内してくれた部屋は、2面がガラスになっている部屋だ。
窓から外を覗くと、都会の夜景がキラキラと目に飛び込んで来た。
そして、部屋の奥にある扉を開けると、ウォークインクローゼットが付いている。
しかも、この中で生活ができそうなくらい広いのだ。
「凄いですね…こんな大きなクローゼットも付いていて、私には勿体ないくらいのお部屋です。」
「梨沙…寝るのは、僕と同じ部屋で良いよね?」
「…っえ?」
焦っている私とは裏腹に、進一郎さんは隣の部屋のドアを平然として開けた。
そこにはクイーンサイズというのだろうか、大きなベッドが置かれた部屋だった。
「一応、ベッドは大きいサイズだから、二人でも窮屈では無いと思うよ。でも、梨沙の好みのベッドを、今度一緒に見に行こうね。」
「あの…私も…一緒に…寝るのでしょうか?」
進一郎さんは真っ赤になっているであろう、私の頬に手を添えた。
「梨沙…嫌なの?…僕は早く一緒に寝たいけど…無理強いはしたくない…どうかな?」
進一郎さんと一緒に寝るのが嫌なはずは無い。
しかし、男性と付き合った経験も少ないし、同じベッドで寝ると考えただけで、心臓が爆発しそうである。
「嫌では…ありませんが…緊張してしまって…進一郎さんは…きっと経験豊富だから…平気なんですよね。」
経験豊富なんて、とんでもない事を口にしてしまった。
焦った私は、口を押えて俯いた。
進一郎さんは、いきなり私の手を掴むと、自分の胸に触れさせた。
進一郎さんの心臓の音が、手の感触に伝わる。
「梨沙…僕だって、今こんなにドキドキしているんだ。…確かに、いろいろと全てが面倒に感じた時期があって、投げやりに女性と遊んでいた事もある…でも、好きな女性と寝るのは初めてなんだよ。」
「そ…そんなこと言われると…余計に意識してしまって…」
進一郎さんは、私の顔を覗き込んでクスッと笑みを浮かべた。
「心配しなくても大丈夫だよ…無理やり抱いたりしない…梨沙の気持ちが追い付くまでは、何もしないから安心して。」