御曹司様はあなたをずっと見ていました。

「梨沙、僕はそろそろ先に寝かせてもらうよ…梨沙も夜更かしはよくないぞ。」

進一郎さんは、私に言葉を掛けると、自分の横にあるベッドサイドランプを消した。

すると、疲れているのか、すぐに静かな寝息が聞こえてきたのだ。
私は本を閉じて、進一郎さんの顔に目を移した。

寝ている顔は少し若く見える。
しかし、眠っている顔も素敵すぎる。

(…わぁ、睫毛がすごく長いんだ…高い鼻筋に、薄くて形の良い唇…本当に綺麗な顔なんだ…)

少しの間、進一郎さんの顔に、見惚れてしまっていたようだ。
ふと気が付き、時計に目を向けると、もう起きる時間まで5時間を切っているではないか。
私は慌ててベッドに潜り込み目を閉じた。

しかし、なんとか寝る努力をしようと目を閉じるのだが、目が冴えて眠れない。
横に眠る進一郎さんを起こさないように、静かに寝がえりをうつ。

「…梨沙、眠れないの?」

突然に、眠っているはずの進一郎さんから、言葉を掛けられて驚いた。

「…し…しん…進一郎さん、起きていたのですか?」

すると、進一郎さんは腕を伸ばして私を引き寄せた。
そして、私を腕枕するように抱きしめて、頭を優しくポンポンと叩いたのだ。
進一郎さんの腕の中で心臓が破裂しそうだったが、不思議と安心感と心地よい温かさに頭がふわふわしてくるのだった。



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