御曹司様はあなたをずっと見ていました。

「梨沙、おはよう!」

事務所の戸を開けると、すぐに裕子の声が響いた。

「裕子…早いね、もう出社しているんだ。」

すると、裕子は目を輝かせて嬉しそうに話し出した。

「うん、なんだか、ここの会社で皆さんと一緒に仕事できるのが嬉しくて…仕事が楽しいなんて、今まで思ったこと無かったよ。」

「裕子、…私もこの会社の仕事が楽しいし、裕子が一緒なんて最高だよ。」

裕子の言っていることは確かだ。
優秀な人たちと仕事をするのは、大変な反面すごくやりがいもあり、楽しいと感じる。

突然、裕子が私の隣に近づき、悪戯な表情をする。

「ところで…奥様、素敵な旦那様と一緒に暮らし始めていかがですか?…幸せいっぱいかな?」

「裕子!…まだ奥様じゃないし…そんな…普通に同居しているだけだよ。」

すると、裕子は目を大きく開いた。

「ねぇ…まさか…高宮さんと何も無いなんてこと…無いよね?」

「べ…別に…何も無いけど。」

「まさか、一緒に寝てないの?」

「ベッドは一緒だよ…でも特に何も無いよ。」

裕子は私の言葉を聞いて、大きく口を開けて驚いている。
次の瞬間、少し心配そうな顔をしたのだ。

「ねぇ…まさか、梨沙が抱かれるのを断ったり、してないよね…。」

「う…うん…たぶん。」

すると、裕子は大きく首を横に振りながら、私の両肩を掴んだ。

「梨沙!あんなにカッコ良い高宮さんだよ…梨沙が待たせているうちに、誰かに取られちゃうかもよ!分ってるの?…もう、梨沙がもっと積極的にしないとダメだよ。」

「…う…うん。」

そこへ、進一郎さんと赤沢さん、細谷さんが入って来た。

裕子は何事も無かったかのように、笑顔で挨拶をした。

「おはようございます。」

3人は裕子と私に笑顔で応えながら、自分の席に着いた。


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