御曹司様はあなたをずっと見ていました。
その日の夜。
進一郎さんは赤沢さん達と外出して、少し帰りが遅くなるという。
夕食も接待で食べて来ると言っていたため、私は自分の夕食を、簡単にお弁当で済ませてしまった。
しかし、進一郎さんには、軽い夜食にと思い、野菜スープを作っておくことにした。
コンソメの味付けで、トマト、キャベツ、玉葱を入れてコトコトと煮込む。
隠し味に、トマトケチャップとはちみつを少々入れる。
このお料理は、私が試験勉強で遅くまで起きていた時や、体調が良くない時に、おばあちゃんが作ってくれた野菜スープだ。
薄味で仕上げるため、野菜の優しい味がして、体が温まり、なぜか元気になるのだ。
夜食の準備も終えた私は、リビングで読書しながら進一郎さんの帰りを待つことにした。
本に夢中になると、あっという間に時間を忘れるのが私の悪い癖だ。
気づけば日付はとっくに変わっている。
本を読んでいると時間が経つのがとても早く感じる。
すると、私のスマホに進一郎さんのメッセージが入った。
『梨沙、遅くなってごめん。もう少し時間がかかりそうなので、先に寝ていてください。』