御曹司様はあなたをずっと見ていました。
その時だった。
隣に眠る進一郎さんから、いつもと違う香りを感じたのだ。
進一郎さんは、いつもシトラス系の香りがする。
恐らく使っている、フレグランスの香りなのだろう。
しかし、今日は何故か微かではあるが、少し甘い香りがするのだ。
それは女性が使う香水の香りのように感じる。
考えたくないが、香水の香りが移るほど、女性が近くにいたのだろうか。
進一郎さんを疑いたくないが、胸が締め付けられて、息が苦しい。
杞憂なら良いが、良くない事を考えてしまう。
すっかり目が覚めてしまった私は、少し早いがベッドから起き上がった。
時間が早いので、進一郎さんの朝食を作ろうとキッチンに向かう。
すると、夜食に作ったスープのメモには、『ありがとう』とメッセージが書き加えられていた。
しかし、ほとんど食べていないようだ。
そのため、朝食も口当たりの良いサラダとフルーツだけにしておいた。
進一郎さんの朝食は作ったが、自分は外に出ることにした。
それは、起きて来た進一郎さんと顔を合わせてしまうと、平常心でいられる自信がなかったからだ。
もやもやした気持ちが顔に出てしまいそうだったのだ。