御曹司様はあなたをずっと見ていました。
マンションから出て少し歩くと、今まで気が付かなかったが、レトロな雰囲気の喫茶店を見つけた。
この辺はビルが立ち並んでいるが、ビルの間にひっそりと隠れるように、その喫茶店はあったのだ。
朝ということもあり、前を通る人たちも早足で通り過ぎてしまう。
なんだか秘密の隠れ家を見つけたようで、胸が高鳴る。
私は吸い込まれるように、その喫茶店のドアを開けた。
ドアはとても歴史を感じる古い木で出来ている。
飴色に黒ずんでいるところも、なんとなくノスタルジーを感じる。
ドアは、カランカランとベルの音を鳴らしながら開いたのだ。
店内にはカウンターとテーブル席があり、カウンターには常連のような人たちが、お店のマスターと話をしている。
私が入って来たことに気づいたマスターが、笑顔で声を出した。
「いらっしゃいませ。どうぞお好きな席にお掛けください。」
マスターは60代後半か70代くらいだろうか。
白髪をキッチリとセットして、アイロンがしっかりかけてある白いワイシャツと黒いズボンをはいている。
とても清潔感がある初老の男性だ。