御曹司様はあなたをずっと見ていました。
「…おはよう、裕子」
事務所のドアを開けると、今日も裕子は早く出社していた。
既にノートパソコンを開いて、仕事をしていたようだ。
「梨沙、おはよう。」
「裕子、仕事に熱心なのは良いけど…無理しないでね。」
すると、入り口のドアがカチャリと音を立てて誰かが入って来る。
進一郎さんだ。
なんとなく気まずく、何を言ったらよいのか言葉に詰まっていると、裕子が先に声を出した。
「おはようございます。…高宮さん、なんだかお疲れのようですね。」
「うん。昨日は少し遅かったからね…でも、西村さんに見破られるなんて、社会人失格だね。」
確かに、裕子と話をする進一郎さんは、いつもより疲れているように見える。