御曹司様はあなたをずっと見ていました。
…妹?

「進一郎!ここがオフィスなの?」

裕子が玄関のドアを開けると、若い女性が飛び込んで来たのだ。
進一郎さんは、自分の額に手を当てると、その女性に向かって疲れた表情をした。

「真紀、ここには来るなと言っただろ。」

「…うーん、でも進一郎に会いたくて来ちゃった!」

進一郎さんは、この女性に“真紀”と言っている。
この女性が、“真紀ちゃん”なのだろうか。

日本人離れした、くっきりした目鼻立ち。
くるくると表情を変える、大きな瞳。

しかし、顎のラインで切り揃えられボブの髪は、意志の強さを象徴しているように見える。

さらに、この女性は進一郎さんに近づくと、飛びつくように抱き着いた。

「おい…ここは日本なんだぞ…誤解されるようなことはしないでくれ。」

進一郎さんは、真紀ちゃんを諭すように、自分から引き離した。

すると、驚きで言葉の出ない私と裕子に、赤沢さんが説明をした。


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