御曹司様はあなたをずっと見ていました。

「佐々木さん、僕は先に戻ります…ゆっくり昼食を食べてください。」

「あ…あの…」

神谷さんは私にそう伝えると、足早に社食から出て行ってしまった。

いきなりぶつかって来た女性にも驚いたが、私は神谷さんの眼鏡を取った顔に驚いていた。
まるで眼鏡と前髪で顔を隠すようにしているようではないか。
…何か理由があるのだろうか。

その日の午後、神谷さんはなかなか席に戻ってこなかった。

すると、事務所内がなにやらザワザワとしてきた。

「高宮専務だわ…今日もカッコイイ!」
「目の保養になるよね…いつみてもイケメン…。」

女性たちが騒いでいるのは、最近海外支店から戻って来たという専務のことだ。

『高宮 進一郎(たかみや しんいちろう)。』専務取締役、29歳独身。
いわゆる御曹司で、見た目もかなりのイケメンなのだ。
長身で180㎝以上はありそうだ。
おまけに端正な顔は、美しい作り物のようだと噂になっている。
眉目秀麗な男性なのだ。


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