御曹司様はあなたをずっと見ていました。
すると、真紀ちゃんは周りをクルリと見渡すと、クスッと口角を上げた。
「進一郎、しばらく私もここに住んでも良いかしら?」
「…は?」
「ずっとホテル住まいはお金がかかるし、実家はいろいろと五月蠅いから嫌なのよ。良いでしょ?」
進一郎さんは、呆れたように大きく息を吐いた。
「わかった。…ただし…自分で済むマンションを早急に探すんだ。それまでなら、ここに置いてやる。それが条件だぞ。」
「進一郎!…大好き!」
真紀ちゃんは、笑顔で進一郎さんにもう一度抱き着いた。
------その時!
一瞬ではあるが、真紀ちゃんは私と裕子に鋭い視線を向けると、片方の口角を上げて笑ったように感じた。
思い過ごしと思ったが、何気なく隣にいる裕子の顔を見た時に確信した。
恐らく裕子も同じことを感じたのだろう。
裕子は唇にギュッと力を入れて、眉間に皺を寄せたのだ。
裕子は怒っているときや、嫌な気分の時にこの表情をするのだ。