御曹司様はあなたをずっと見ていました。
昼食を終えて、私は洗面で歯磨きを始めた。
洗面につけられた大きな鏡は、八角形の形になっており、周りにはチューリップのデザインをモチーフにしたフレームが付いている。アンティークな雰囲気の鏡と、現代風の洗面が不思議とマッチしているのだ。
すると、鏡越しに、後ろから人の気配を感じる。
そっと振り返ってみると、そこには真紀ちゃんがいて、鏡越しに
こちらを見ているではないか。
「…真紀さん?」
すると、真紀ちゃんは氷のような冷たい目のまま、口角だけを上げて笑った。
「ねぇ、あなたが梨沙さんなの?…悪いけど、ここから出て行ってくれない?」