御曹司様はあなたをずっと見ていました。

「嫌よ!私は諦めないわ。」

真紀ちゃんは駄々をこねる子供のように大きな声をだした。

「真紀、…僕には梨沙がいる。…いいや。いなかったとしても、真紀は妹以上に考えられない。」

真紀ちゃんは進一郎さんの言葉を聞いて、ポロポロと涙が頬をつたっている。
すると、なぜか赤沢さんが、急に真紀ちゃんを後ろから抱き締めたのだ。

「真紀ちゃん、もう進一郎ばかり追いかけるなよ!」

驚いたのは、真紀ちゃんばかりではなく、その場に居た全員が驚きで言葉を失った。
さらに、大きく目を見開いた真紀ちゃんに赤沢さんは話を続けた。

「僕は、学生時代から高宮にくっついていた真紀ちゃんが、可愛くて大好きだった。最初は単なるブラコンなのかと思っていたけど、そうでは無いと分かったのが、高宮に彼女が出来た時だったよ。見ていられないくらい落ち込んでいたよな。…でも、今思えば、高宮は真紀ちゃんのために、彼女を作ったのだと思うんだ。自分から真紀ちゃんを遠ざけるためにな。」

進一郎さんは、赤沢さんに向かって驚いた顔をした。

「…赤沢、…お前は気がついていたのか?」

「あぁ、お前は言い寄って来る沢山の女に、まったく興味を示していなかった。それなのに、今まで避けていた、しつこく付き纏う彼女と、いきなり付き合うと言い出しただろ。…どう考えてもおかしいだろ。」

「…赤沢。お前に見抜かれていたとはな。」

「高宮に彼女ができてから、真紀ちゃんは頻繁に会いに来なくなっただろ…なんとなくお前を見ていると、それが目的としか思えないんだ。…付き合っていながら、彼女に見せるおまえの笑顔は氷のように冷たかったからな。」

さらに赤沢さんは思いつめたように話し続けた。

「その時に僕は気づいたんだよ…僕は真紀ちゃんに会うのが楽しみだったんだってね…真紀ちゃんが来なくなって初めて分かったんだ。…でも、親友の妹に気持ちを伝えることはできなかったんだ。だから心の奥底に封印することにしたんだ。」



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