御曹司様はあなたをずっと見ていました。

真紀ちゃんの一件から一週間後の週末。
今日は進一郎さんに連れられて、ウェディングドレスを見に来ていた。

ここはウエディングやフォーマルな洋服を扱う専門店だ。
どうやら古くから高宮家御用達のお店のようだ。
入り口には、純白でレースの美しいドレスや色とりどりのカラードレス、男性のタキシードなどが飾られていた。

思わずその美しさに口角が上がる。

「進一郎さん…こんなに沢山の形があると、迷ってしまいますね。」

すると、進一郎さんは店員に何かを頼んでいるようだ。
少しして、お店の女性が一着のウェディングドレスを持ってきたのだ。
そして、目の前のハンガーにかけた時、驚きで息が止まった。

「進一郎さん…このドレス…なんで…。」

「…うん。このドレスは、以前に梨沙が読んでたウェディング雑誌に付箋がつけてあったのを見たんだ。そのドレスの形で作ってもらったんだよ。…気に入らないかい?」

「…気に入らないなんて…ある訳ないです。…ありがとうございます。」

このドレスは以前に結婚式の特集雑誌を買った時に、海外の女優さんが着ていたウェディングドレスだ。あまりにも素敵で付箋をつけていたのだ。
袖や首から胸元、そしてドレスの裾に美しい刺繡と立体的な小花があしらわれている。
形は王道と言って良いのだろう、プリンセスラインのふわりと膨らんだスカートが美しいシルエットだ。

「梨沙、…着てみてくれ。…サイズはブティクの美月に頼んだから大丈夫だと思うが…。」

試着室に通された私は、髪を簡単にアップにしてもらって花を髪に飾ってもらった。

「進一郎さん…どうでしょうか。」

私が恐るおそる試着室から出ると、進一郎さんは私を見て目を細めて口角を上げた。

「梨沙…とても綺麗だ。」

進一郎さんの言葉を聞いて、顔が勢いよく赤くなるのを感じる。
頬から火が出そうである。

進一郎さんは、熱くなった頬に手を添えた。
そして、周りの人達に聞こえないように耳元に口を近づけた。

「誰にも見せたくないほど綺麗だよ…梨沙。」

心臓が大きく弾けて心停止になりそうだ。
耳元で囁くセクシーな声には、ものすごい破壊力があり、私は瞬殺されて気を失いそうだ。

その後、進一郎さんは用意されたグレーのタキシードに着替えた。
その姿は、カッコイイなんて言葉では言い表せない、神々しい姿に見えた。

お互いのスマホで写真を撮りあい、最後に二人で並んだところをお店に人に写真を撮ってもらった。
俗に言うバカップルになっていたに違いない。
しかし、進一郎さんのタキシード姿は、店の女性達も見た途端に顔を赤くしていたようだ。

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