御曹司様はあなたをずっと見ていました。
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ここは病院の個室。
普段は部屋の真ん中にベッドが置かれているが、そのベッドは部屋の一番端に移動してある。
その代わりに、部屋の中央にはテーブルと椅子、そして大きな鏡が用意されている。
真っ白な壁の前には大きなハンガーラックが用意されていて、私のウエディングドレスが掛けられていた。
今日は進一郎さんが、おばあちゃんの為に企画してくれた身内と親しい者だけで行う結婚式だ。
おばあちゃんの入院している病院の個室で結婚式の準備をしている。
朝早くから、この式のためにヘアメイクを行う女性たちが3人も来てくれていた。
髪をふわふわにカールしてそれを綺麗にアップしていく。
そして、ドレスに散りばめられた花のモチーフと同じような飾りを、髪にも乗せていく。
自分で言うのも可笑しいが、馬子にも衣裳だ。
このドレスを着てプロにヘアメイクしてもらうと、自分とは思えない仕上がりに驚いてしまう。
「梨沙様、とても綺麗ですよ。…早く進一郎様にお見せしたいですね。」
ヘアメイクの女性の一人が嬉しそうに話している。
「ありがとうございます。皆さんのお陰で別人になった気分です。」
私がお礼を女性たちに伝えている時だった、ドアをノックする音がしたのだ。
そして、ゆっくりとドアが開けられると、そこに居たにはグレーのタキシードを着た進一郎さんだ。
進一郎さんは、部屋に入ると真っすぐにこちらに歩いてきたのだ。
その姿は、試着の時の数十倍はカッコよく輝いて見えるようだった。
心臓がドクリと大きく音を立てた。
「梨沙…とても綺麗だよ。」
「し…し…進一郎さんも…すごく…素敵です。」
周りの女性達も、大きく頷きながら頬を赤くしていた。