御曹司様はあなたをずっと見ていました。
甘く幸せな時間は、あっと言う間に過ぎるものだった。
家に戻ると急に現実へと引き戻される。
今日はもう仕事なのだ。
しかも、進一郎さんはさらに忙しくなるようだ。
今回、元の会社を救った事や、進一郎さんのお父様から達って願いもあり、会社を兼務することとなったのだ。
しかも、社長として兼務して欲しいと言われ、一度は進一郎さんも断ったようだったが、役員たちからの強い要望もあり、断れなくなってしまったようだ。
そして、今日は元の製薬会社に出社だ。
「梨沙、気は進まないが行ってくる。」
進一郎さんは、小さな溜息をつきながら靴を履いた。
「進一郎さん、そんな浮かない顔ではだめですよ。進一郎さんが戻ってくれるのを、皆が望んでいるのですから…こちらの会社は心配しないで私達にお任せください。」
「あぁ、梨沙たちを信頼しているから心配はしていない。頼んだぞ。」
進一郎さんは目を細めて笑顔をつくると、私の頬に手を伸ばした。
そして次の瞬間、進一郎さんの顔が近づき唇に触れるだけのキスをした。
突然のキスに、照れてしまった私は思わず下を向いてしまった。
「照れる梨沙も可愛いな…抱きしめたくなるが、これ以上は遅刻するから夜まで我慢するよ。」
進一郎さんは私の頭に軽く触れると、ヒラヒラと手を振ってドアを開けてた。
進一郎さんの甘い仕草には、まだまだ免疫ができそうにない。
私は簡単に瞬殺されてしまう。