年下御曹司の箱入り家政婦

恋敵の猛追撃

櫻ちゃんとのデートの日から一週間が過ぎた。
あれから櫻ちゃんとはいつも通り、朝と晩にご飯を一緒にとるくらいで特にこれといった進展はない。
今の姉と弟のような関係性が崩れることを恐れる私にとってはこのまま櫻ちゃんが大人しくしてくれると有り難いのだけど。
私はそう思いながらボウルに入った真っ白なメレンゲを泡だて器でかき混ぜていた。
今日は店の定休日で新さんに直々にパンケーキの作り方を教わっているのだ。

「パンケーキの肝はメレンゲだ。
泡立てすぎても逆に弱すぎても
ケーキがしぼんでしまう原因になるから
ツノが立つ瞬間を見極めなくてはならない」

新さんは腕組んで壁にもたれながら
真剣な表情でこちらを見つめている。

「新さん、これくらいでしょうか？」

私はメレンゲの入ったボウルを新さんの前へ
差し出した。

「少し弱いな。もう気持ちかき混ぜるくらいがベストだろう」

私は「分かりました！」と威勢よく返事をして泡だて器を手に取ると再びメレンゲを泡立て始めた。

「ストップ！」

新さんの声で泡だてる手を止めた。

新さんは「見せて」と言って私からボウルを奪うと
真剣な目でメレンゲの状態を確認した。

「このくらいでいいだろう。
このツノの状態を覚えておいて」

新さんから再びボウルを受けっとった私は
メレンゲのツノの状態を目に焼き付ける。