偽りだらけの私の世界に、本当をくれたのは君でした。
 朝、昼とは全く違う明るさ。空気。

 夜には、朝、昼の美しさが不思議なほどに消える。押し潰されるように。

 泣き声が漏れる。

 本当は、声を思いっきり出して泣きたい。自分の真っ黒な部分を洗い流すように。

 でも、自分が不幸だとか、可哀想だとかは思っちゃいけない。私よりずっと辛い子は世界に何人もいるから。

 何不幸ぶってるんだと、もっと睨まれる。

 「ふぅ・・・」

 ようやく涙が止まる。

 涙が止まると、凄く苦しくなる。

 突然、向かい側の家の一室が明るくなる。

 あの部屋が明るくなると、少し安心する。何でかな。でも、勝手に心の拠り所にするのは気が引ける。

 ふっと口元だけで笑って、部屋の中に戻る。

 机の上に置いてある“赤崖夜天”と書かれたノートを見て、また心が美しい闇に蝕まれていく。
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