消えた影
「前に聞いてたから、姫菜、ナスカの事件をお家の人に頼んで少し調べてもらったんですけど……」

「何かわかったの!?」

「ごめんなさい。まだ何も……」


相園家は世界的な大財閥だ。

その情報網は一国の諜報機関をはるかに上回っている。

それを持ってしても何も分からないとなると、ますますガセネタの可能性が高まった。


「やっぱりよくできたイタズラか単なるデマかな。特に八百面相の方は、もろに『トイレの花子さん』や『口裂け女』みたいな都市伝説っぽいしね」

「あ、はあ……そうですね」

(なんだかよく分からないけど)

「宇宙人ってことはないよなあ。まさか怪盗がねえ」

「そうですよね。動物ならとにかく」

「ハハハ、そうだね」


尊だけでなく、姫菜もアニマル星人を自宅に居候させている仲間だ。

だから二人とも地球に数多くの宇宙人が様々な目的で訪れていることを知っていた。

そいつらがみんな目立たないように活動していることもだ。


彼らはUFOだの怪盗だのと、地球人に注目されることはしないはずだ。

それでは他の敵性宇宙人に見つかってしまうだろうから。


とそこまで考えた彼は、はてと首を傾げた。


「でも待てよ、もし宇宙人だったら……」

「あ、ええと……ネルちゃんたちに、聞いてみたらいいんじゃないですか?」


初めて尊の言いたいことがわかった姫菜が、早口で割って入った。

パッと彼女の手を握りしめた彼は、何度も頷く。


「うんうん!それだよ、相園さん!ノークたちに聞いてみよう、何かわかるかも!」

「そ……そう……です……ね……」



尊くんが手を握ってくれた……幸せの絶頂で、姫菜はそれどころではなかった。
< 11 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop