消えた影
「おっ?」

 ベルトに貼られたワッペンが光り出す。BGDと書かれているのは言うまでもない。

「なんだ?何事だ?」

 彼は手を大きく振り、行進するように歩き出した。何事かと身守る子猫たちを置いたまま、歌に合わせて手足をギクシャクさせてテントから出て行く。

「バカな、勝手に身体が……!」

 庭の縁側の冊子を開け、少年探偵団が揃っている居間へ入っていった。

 曲の伴奏が終わると、行進していた団員たちがピタッと静止する。

「団員は歌に合わせて集合するであります」
「これも装置の効果だぜ」

 居間にいた団員はすべて、自分の意思とは関係なく行進していたのだ。それどころかいつの間にかガブラも混じっている。グイッとノークの胸ぐらを掴んだ。

「やい、『抹茶』っ!貴様、俺に何をした?」
「ほーらね。『赤鬼』は、ちゃんと入団してくれたであります」

 それを見ていた全員(ノークとマルドを除く)は、なんで厄介なあだ名をつけちゃうかなと思った。

 あまり深く考えず、ポンとガブラの肩を叩く。

「よしよし。一緒に怪盗を捕まえような。頼りにしてるぞ、『赤鬼』」

 ニタニタ笑ったノークが彼の胸元を指差す。そこにはみんなと同じ名札があった。書き殴った字で、「赤鬼」と書かれている。

「な・ん・だ・と?誰が赤鬼だと?」

 胸ぐらを掴んだ姿勢のまま、今度はビームライフルの銃口が彼に突きつけられる。

「やだなあ、これは探偵ごっこなの!我輩は別に『赤鬼』のことを赤鬼だなんて思ってな……じゃなくて『赤鬼』は『赤鬼』で……あわわわわ」

 隊員が「ガブラ」と呼ぼうとすれば、自動的に名札の効果で「赤鬼」になってしまうのだ。がそんな説明をする暇などなく、ビームライフルの連射を食らった。あっという間に黒焦げとなる。そんなガブラを、縁側から恐る恐る見つめる二匹の子猫。

「あ、また来てたんだね。今日は友達を連れてきたの?」

 気づいた尊がおいでと手招きすると、白猫は嬉しそうにヒョイっと部屋へ上がっていく。トラ猫の方も、ソワソワと気を配りながら上がり込んできた。
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