消えた影
「こんな大規模なことができるなんて、ライバルの宇宙人とも考えられますね」
「まさか!あと二日しかないのに本当に東京タワーなんか……?」

 ネールの言葉に、心愛は不安げな顔をする。一方、尊は「それならそれで面白そう」とワクワクした顔である。

「よし、僕たちで東京タワー周辺を警戒しようよ。八百面相は油断してるしさ」
「あんた、やけに乗り気ね」
「そりゃあ、東京の建造物を盗むなんて日本人として黙っていられないよ。うん」

 ノークが純真そのものといった感じで瞳を輝かせ、尊の手を取った。

「ボクは嬉しいよ『オカルト』!さあ共に正義のために戦おう。少年探偵団、捜査開始だ!」
「おう!」

 気勢を上げてネールにガブラ、それにノアちゃんが刑事物のドラマのように部屋を出ていく。しかしそれに続こうとしたノークと尊は、猫みたいに襟首を捕まれていた。

「ちょっと!あんた達はダメよ」
「どうしてでありますか!?」
「探偵ごっこは明日からよ。もうすぐ夕ご飯でしょ。当番サボるのは許しませんからね」

 ちぇ、つまんねぇのという顔で頷く二人。

「それとそこの『うさ耳メガネ』!」
「ん?どうした『怪力女』?」
「それそれ!それよ!あだ名で呼ぶ効果だけでいいから切りなさいよ」
「チッ。しゃれの分からない女だな」

 こればっかりは心愛の言う通りである。みんながみんな同じあだ名を呼んでいたら、誰が誰なのか分かりづらいだろう。いちいち「〇〇が言った」と書く際、あだ名で書いていたら読みにくいったらありゃしない。何より文章のテンポが悪くなるだろう。

「ほ〜らね!賛成の声も聞こえてきたし、即刻と切りなさい」
「やれやれ、しょうがねぇな。ファジー対応モードに切り替えてやるか」

 不満げにボソリと呟いたマルドは、チラッとコチラ(・・・)を見やる。彼のメガネがキラリと光った。

「ま、お返しに半強制型状況作成装置の効果を『強』にしてやるさ……ククッ……」

 どうやって察知したのか分からないが、明らかにコチラ(・・・)を見て笑っている。いやいや気のせいだろう。まさか少年探偵団のノリがコチラ(・・・)にまで及ぶはずはない。いかにアニマル人の科学力が優れていても……だ。

「さあてね、そいつはどうかな?ククッ……」

 装置のレバーがガコンと「強」にする音が聞こえてきた。
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