ずっと、好きなんだよ。
「ねぇ、奈和」


「何?」



ハイペースでビールやらハイボールやらを飲み続けて約2時間経過。


大分酔ってきたというのに、由紀ちゃんは枝豆の脱け殻を弄りながらも口を動かしていた。



「恋愛ってさぁ、なんだと思う?」


「は?」



"恋愛とは?"


哲学の問題なのだろうか。



「恋って何?愛って何?あたし、もうさぁ、分かんなくなっちゃって」



ちらりと腕時計を見る。


時刻午後9時半。


明日のこともあるのでもう間もなく出たいところだけれど、この手の話となると由紀ちゃんの心理状態が芳しくないことの表れだから、難しいとみた。


私は学生時代となんら変わらず聞き上手感を出して、優しく由紀ちゃんに問いかける。



「柴田さんとなんかあった?」



由紀ちゃんの彼氏は柴田光介さんっていっう私達より2歳年上...つまり大学4年生。


元おひさまーとのバイトの先輩で、高校時代は勉強面でとてもお世話になった。


優しくて朗らかで、なんていうか一緒にいると安心感があるタイプの人。


由紀ちゃんの猪突猛進をも柔く受け止めてくれそうなすごく良い人だと認識してるけど...


どうした?



「いやぁ、ね。世間一般に見れば順風満帆そのものですよ。キャンパスが違えど、家が逆方向だろうと、そんなの越えてラッブラブオーラ全開ですよ。週1でデートするし、月1でお泊まりもします。やることやってますよ。楽しいですよ。...でも、ねぇ。時々思うんですよ。なんか...なんか、足んないって。贅沢言ってんじゃねぇって罵られるかもしれない...ってか、もう奈和の心の声が聞こえてくる気もするんだけど、う~ん...なんて言っていいか分かんないんだけど。なんか、越えたんだよ、たぶん色々。好き嫌い、恋とか愛とか。そしたらなんかたま~にぽかんと穴が開いてそこからすきま風みたいなのが通るんだよ。...って、何言ってんだろ、あたし。はは。なんかポエミーになっちゃった」


< 10 / 170 >

この作品をシェア

pagetop