ずっと、好きなんだよ。
「あの...」



謝りたくて視線を向けると彼もこっちを見ていた。


いつになく真剣な目...。


瞳の底から湧いている暗い色の不気味な力に吸い込まれそうになる。



「どうしたの?」



思いがけず、言葉が溢れた。


苦しそうで、


痛そうで、


しんどそうな、


そんな顔をしている。


私に出来ることがあるとするならば、


話を聞いてあげること。


それくらいしか出来ないけど、


でもやっぱり放っておけないから、


私は向き合いたい。



「朽木」


「何?」


「朽木はさ、自分が自分じゃないみたいな、自分が分からないみたいなこと、あるか?」


「えっ?それって風邪でってこと?」



彼が首を真横にふる。



「違う。ゲホッ。風邪引く前から、なんかずっと...分かんなくて。どうしたらいいか、分かんなくて。ほんと、真っ暗闇歩いてるみたいでさ。ずっとおんなじこと考えてぐるぐるぐるぐるしてたら、心のどっかがポキッて折れて。ゲホッゲホッ...。気づいたら風邪引いて熱出て倒れてた。自分でも、どうしちゃったんだろオレって感じでさ、正直お手上げなんだよ」



そう、だったんだ。


そんなこと、思ってたんだ。


でも、きっとこんなになるまで誰にも言えなくて、


ずっと苦しかったんだろうな。


昔から、そうだったよね。


キミは頑張り過ぎてしまう。


誰にでも愛想よく振る舞って


いつも周りを気にして


周りのために一生懸命で


周りを笑わせて...。


でもその裏できっと誰よりも悩んでたんだよね?


私...やっぱり知らなかった。


全然知らなかったよ。


こんな顔すること、知らなかった。


でも、今知れたから、


大丈夫。


私が、何とかする。


もらったもの、返す番。


私の言葉で大きく変わることがなくても、


それでも、


伝えたい。


辛くて苦しんでる姿、


真っ暗闇なんて、似合わない。


だから、少しでも、


淡い、光でも


私が灯せたら、


また心から笑ってほしい。


そう、思うから


伝える。

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